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デューラーが描いた銅版画「メランコリアI」を考察してみます。 


この銅版画は1514年、今から500年前も前の作品です(1) 。

この絵画、今でも様々な解釈がなされている謎多き作品。



名前もなかなか斬新です。
「受胎告知」とか「手紙」とかではなく「メランコリアI」。
最後に「I」とかついて、意味も想像しづらい。

描かれているものも、ありがちな聖書の一場面とかでもなさそうです。かといって、人物画でもなく、風景画でもなく、静物画でもない。

画面中央の女と子供には羽が生えています。そして女は頬杖ついてます。
そして、足元にはよくわからない動物がうずくまってます。 

よくわからないものは他にもあります。

右上の数字が羅列されたもの。
その上にある鐘。 砂時計。天秤。はしご。 ゴロゴロ転がる岩みたいなもの。

見れば見るほど謎ばかり。 

どんな意味があるのか、すごーく気になりますよね。
これらを、独断と偏見で、考察して自分なりの答えを見つけます。













作者のデューラーとは 

  アルブレヒト・デューラ(1471-1528)は、ドイツのルネサンス期の画家、版画家、数学者(2)だそう。 
また、イタリアに留学した経験もあり、画家名のAとDを組み合わせた史上初のサインを使用した人物としても知られます(3) image
自画像。 なんか見たことあります。










「メランコリア」とは憂鬱

メランコリアとは「憂鬱」のこと。メランコリーとも同じ意味です(4)

「メランコリー」は、メランコリー親和型とかで使われてますね。
几帳面だけど、うつ病になりやすい性格とかで。

あとYUKIさんの曲で「メランコリニスタ」ってありましたね。これも憂鬱と関係があるのかもしれません。 

とりあえず、「憂鬱」が関係している絵というのがわかりました。 











うずくまる犬は憂鬱の象徴

よくわからない動物と言いましたが、これは「丸まる犬」だそう(5)。
つまり犬です。なんか、毛がないですけどね。

実は「丸まる犬」は「憂鬱」を象徴しています。(5)。 

なるほど、題名と一致します。 これで、犬の謎は解けました。















女は美と憂鬱の象徴

石臼の上に座る子供。 
そして横に座る頬杖をついた女。

どちらも人間じゃない事がわかります。

何故分かるかって? 
羽が生えてるから。人間は羽生えないですよね。

人間ではないということは、何かを象徴しています。 

じゃあ何の象徴なのか。 
その鍵は子供と女のペアにあると思います。 

まず、羽の生えた子供。 

子供で天使といえばキューピッド。 つまり 羽の生えた子供はキューピッドと思われます。

キューピッドはクピードーとも言われ、ローマ神話に出てくる愛の神のことです。(6) 

このキューピッド、この絵においてあまり意味はないと思います。 
大事はのはキューピッドとペアで描かれる事で女が推定できるということ。 

 キューピッドとペアで描かれるのは、ヴィーナス(7)ということが知られています。
この絵のキューピッドはヴィーナスのアトリビュート(持ち物)でしかありません。

では、この大きく書かれたヴィーナスは何を象徴しているのか?

 ヴィーナスはローマ神話における美の神(8)です。

つまり、女はデューラーにおける美意識を象徴しているのではないでしょうか。 



さらに特筆すべき点があります。

そして、この美意識の象徴である女は頬杖をついています。 

頬杖をつく若くない男は「憂鬱」の象徴(5)でもあります。 
これはヴィーナスなため、男ではないですが、顔は中性的な顔立ちをしているのはそのためだと思われます。


また、この男ぽい女、腰に鍵を携えています。 
この鍵も憂鬱の象徴です(9)

このように女は憂鬱も同時に象徴していることが分かります。

つまりこの女、憂鬱と美意識の両方を意味しており、デューラーにおいては、憂鬱と美意識は関係している事を意味しているのではないでしょうか。 











憂鬱は想像性と関係している 

この絵は四体液説の影響を受けているととが知られています(1)。 
四体液説とは、私もよく分かってないのですが、簡単に言うと、性格は4つに分類できるよーっていう事です。 

憂鬱気質はこの4つのうちのひとつです。

憂鬱と聞くとマイナスなイメージをうけますがは、人間的な想像性と関係しているということも言われており(10)、ポジティブなイメージの解釈もされていました。 


実はデューラーは四体液説がお気に入りだったことが知られています。 例えばこの絵。

この絵は「四人の使徒」 四人がそれぞれ、人間の4つの気質を合わしているということが分かっています(11)。 










魔方陣は知性の象徴

メランコリアIに戻って、他の気になる部分を見てみます。 

まずは右上の数字の羅列。


これは魔方陣。
縦横斜めを足しても同じ数になるように作り上げたものです(12)。 

しかもこの魔方陣、下の横一列の真ん中2つが15と14になっています。

これは、このメランコリアIが作られた年と一緒です。(5)(12)
なかなか手の込んだ作りになっています。


魔方陣は知性の象徴とも言えます(13)。知性も憂鬱気質と関連付けて考えられており、題名と一致します。


知性を象徴するのは他にもあります。

壁に掛けられた天秤。
天秤は真偽をはかるものの象徴(5)
すなわち、これも知性を象徴しているのです。










完璧を作りたい女 

次にまた女を見ます。 

女の手にはコンパスが見えます。
コンパスは何を描く道具か? 
そうです、円を描く道具ですね。 

円と言えば下の方に球体が転がっています。 
そして、女の目線の先には謎の多面体。 
そして手には円を作るコンパス。 


つまり、 女は目線の先の多面体から、球体を作りたいのではないでしょうか。 

足元にはノコギリなどの大工道具が散乱しています。 これは、多面体を一生懸命、球体に近づけていたことを意味していると思います。



円というのは、完全なるものを象徴します(5)。 

仏教でも円は欠けるところがなくて、完全なものを、象徴しますね。
有名なお寺の窓が丸かったりするのもこれです。 

つまり、デューラーの美性である女は完全なるものを作りたいと願っているのではないでしょうか。 









デューラーの焦り

人間の命は限りがあります。
それは今も500年前も同じ。 
デューラーも命尽きるまで、完璧なものを作ることができるのか焦りを感じていたのではないでしょうか。 

例えば、画面上にある 砂時計
時間に限りがあることを伝えています。

そして、女が見ている多面体。
白い部分は、ドクロに見えます(13)
これは死が迫っていることを象徴しているのではないでしょうか。 

さらに、魔方陣の上にある鐘。
天啓を呼びたいのかもしれません(5)。  










まとめ 

この絵の意味をまとめます。

デューラーの美の創造性とも言える憂鬱気質は、完璧な作品を作りたいと願う。しかし、命あるうちに成し遂げることができるか、焦りを感じている。 
 
メランコリアIの「I」は憂鬱気質がステージ「III」あるうちの、「I」を意味しているようです。 

絵には、ネクストステージに上がる階段も用意されています。

次のステージへ上がることができるのか、焦りを感じているのでしょう。





500年経っても激論を呼ぶ「メランコリアI」。

すごい作品ですよね。
今の時代の映画が、500年後も見られて、その時代でも議論されているようなものです。
想像できません。

優れた作品は時代を超えるんだなと痛感しました。


終わり。













参考文献

(1)Wikipedia「メランコリアI」https://ja.m.wikipedia.org/wiki/メランコリア_I 
(2)Wikipedia「アルブレヒト・デューラー」https://ja.m.wikipedia.org/wiki/アルブレヒト・デューラー
(3)azuma takashi 「アルブレヒト・デューラー Albrecht Durer 1471-1528 | ドイツ | ドイツ・ルネサンス」Salvastyle.com http://www.salvastyle.com/menu_renaissance/durer.html 
(4)コトバンク「メランコリー」https://kotobank.jp/word/メランコリー-644370#E3.83.87.E3.82.B8.E3.82.BF.E3.83.AB.E5.A4.A7.E8.BE.9E.E6.B3.89
(5)中野京子 2013「中野京子と読み解く名画の謎」文藝春秋
(6)Wikipedia「クピードー」https://ja.m.wikipedia.org/wiki/クピードー
(7)八木あすか「東京アートレビュー」1997 http://www.japandesign.ne.jp/HTM/REPORT/art_review/50/index4.html
(8)Wikipedia「ウェヌス」https://ja.m.wikipedia.org/wiki/ウェヌス
(9)飾釦 2010 「デューラー『メランコリア』若桑みどり(人間大学1992年放送)による解説」http://blog.goo.ne.jp/masamasa_1961/e/81f32a463b176da027022eaa01a94b7d
(10)壺齋散人(引地博信) 2011 「壺齋散人の 美術批評」http://art.hix05.com/durer-2/durer216.melancolia.html
(11)Earl Art Gallery 2000「ヴァーチャル絵画館 デューラー」http://art.pro.tok2.com/D/Durer/Four.htm
(12)Wikipedia 「魔方陣」https://ja.m.wikipedia.org/wiki/魔方陣
(13)石津秀子 「デューラー作《メレンコリア》――レギオモンタヌスの記念碑――」
 http://www.seijo.ac.jp/pdf/falit/188/188-4.pdf






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